
「もっと売らなければ」より先に確認したいことがあります
資金繰りが苦しくなると、多くの経営者は「もっと売上を作ろう」「値上げしよう」「融資を受けよう」と考えます。しかし、すでに十分な売上があるなら、まず確認してほしいのが入金まで何日待っているかです。月500万円を売り上げても、その500万円が60日後まで入ってこなければ、その間の給与・外注費・材料費は会社が立て替えなければなりません。そこで今回は、取引先との関係を壊さずに「入金を少し早めてもらう」ための支払いサイト改善術を紹介します。
まず自社の支払いサイトを調べてみよう
請求書を5社分ほど並べ、実際の締日と入金日を書き出してみてください。
A社:月末締め翌月末払い → 約30日
B社:20日締め翌月末払い → 約40日前後
C社:月末締め翌々月末払い → 約60日
D社:月末締め翌々月末払い → 約60日
E社:検収後翌々月払い → 60日超になるケースも
ここで重要なのは、「一番遅い会社」だけではありません。
例えば、90日サイトでも月10万円しか取引がない企業と、60日サイトで月500万円取引している企業なら、後者の方が資金繰りへの影響は大きくなります。
「取引額×入金までの日数」で考えるのがポイントです。
たった30日の違いが大きい
毎月500万円を請求している会社で考えてみます。
60日サイトなら、単純化すると2か月分にあたる約1,000万円が売掛金として未回収です。
これが30日サイトになれば、約500万円まで減ります。
| 項目 | 60日 | 30日 |
|---|---|---|
| 毎月の売上 | 500万円 | 500万円 |
| 未回収売掛金の目安 | 約1,000万円 | 約500万円 |
売上を1円も増やしていないのに、会社が必要とする運転資金は大きく変わります。
つまり、資金繰り改善は「売上を増やす」だけではありません。
今ある売上を早く現金にすることも重要な改善策です。
なぜ値上げより相談しやすいことがある?
例えば現在100万円の商品を105万円へ値上げすると、取引先は毎回5万円多く支払わなければなりません。
一方、100万円という取引金額はそのままに、支払日だけ60日後から30日後へ変更する場合、取引先が支払う総額は変わりません。
もちろん発注企業側にも資金繰りがありますので簡単ではありませんが、単価改定とは違う交渉として検討してもらえる場合があります。
特に長期間取引していて、これまでトラブルがなく、今後も発注が続く関係であれば相談してみる価値があります。
「早く払ってください」はNG
交渉するときに最も避けたいのが、
「資金繰りが厳しいので早く支払ってください」
「会社に現金がありません」
「このままだと支払いができません」
と伝えることです。
これでは取引先に「この会社は大丈夫なのか?」という信用不安を与える可能性があります。
伝えるべきなのは、会社の危機ではなく安定した取引を継続するための条件見直しです。
交渉に使いやすい5つの理由
支払いサイト変更をお願いする際には、次のような理由を組み合わせると説明しやすくなります。
- 材料価格の上昇
材料を先に購入する必要があり、先行負担が増えている。 - 外注費の増加
協力会社への支払いが取引先からの入金より早い。 - 人件費の上昇
給与は毎月支払う一方、売掛金は数か月後に入金される。 - 受注増加
売上拡大に伴い必要運転資金も増えている。 - 安定供給の維持
資材確保・人員確保を安定させ、今後も品質を維持したい。
そのまま使える交渉メール
件名:お支払条件見直しのご相談
平素より大変お世話になっております。
昨今の原材料費・外注費・人件費等の上昇に伴い、今後も安定した供給・サービス体制を維持していくため、現在のお支払条件について一度ご相談させていただきたくご連絡いたしました。
現在「月末締め・翌々月末払い」としていただいておりますところ、可能でございましたら、今後「月末締め・翌月末払い」への変更をご検討いただけないでしょうか。
単価の変更ではなく、お支払い時期についてのご相談となります。
弊社としても今後より一層安定した対応に努めてまいりますので、ご事情も含め、一度協議のお時間をいただけましたら幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。
一気に30日にしなくてもいい
現在90日程度のサイトなら、「90日から30日にしてください」では取引先も対応しづらい可能性があります。
そんなときは段階的に交渉します。
90日 → まず60日へ
60日 → 45日へ
材料費だけ前払い
契約金額の20%を着手金
高額案件だけ30日払い
「全部変えてください」よりも、相手が受け入れられる落としどころを複数用意する方が成功率は上がります。
取引先にも事情がある
支払いサイトは、担当者が自由に変更できるとは限りません。
大企業では全取引先について共通の支払いシステムを利用しているケースもあります。稟議が必要だったり、本社経理の承認が必要だったりすることもあります。
そのため、回答に時間がかかったとしても「払う気がない」と決めつけず、相手側の内部事情も確認しましょう。
2026年は支払い条件のルールにも注目
2026年1月1日から取適法が施行されています。
取適法の対象取引では、委託事業者は、物品等を受領した日や役務提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間に支払期日を設定する必要があります。
さらに手形払いも禁止されました。支払いサイトを長期化させ、中小企業側に資金負担を集中させる商慣習を見直す方向が一層強くなっています。
ただし注意
すべての企業間取引が取適法の対象になるわけではありません。企業規模や委託内容等によって適用関係は異なります。
サイトを短縮してもらえないときは?
交渉しても、「弊社は全取引先60日払いなので変更できません」と回答される場合があります。
この場合は、自社側の資金繰りを調整します。
- 銀行へ運転資金融資を相談する
- 当座貸越枠を設定しておく
- 仕入先への支払いサイトも交渉する
- 着手金・中間金を設定する
- 不要な在庫を削減する
- 請求書発行を早める
- ファクタリングを利用する
請求書を出すのが遅い会社も要注意
取引先の支払いサイトだけを問題にする前に、自社の請求業務も確認しましょう。
月末に完了した仕事の請求書を翌月10日や15日に作成している場合、それだけで資金化が10~15日遅れている可能性があります。
業務完了後すぐに請求データを作成し、取引先の締日に確実に間に合わせるだけでも資金繰りが改善する場合があります。
お金をかけずにできる改善
- 請求書発行を自動化
- 納品確認を早める
- 検収書をすぐ回収
- 請求漏れを毎月チェック
- 支払期日前に入金予定を確認
ファクタリングなら「取引先の条件を変えずに」早期資金化
支払いサイト短縮交渉のデメリットは、取引先の同意が必要なことです。
一方、ファクタリングは、すでに発生している売掛債権をファクタリング会社へ売却することで、支払期日前に現金化する方法です。
たとえば取引先の支払いが60日後でも、売掛債権を早期に資金化できれば、その間の仕入代金、給与、外注費などに充てることができます。
ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、利用目的を明確にしておくことが重要です。
「毎月使わなければ資金が回らない」状態なら、支払いサイトだけでなく、利益率、固定費、借入返済、仕入条件なども含めて経営全体を見直す必要があります。
支払日はまだ先。でも支払いは待ってくれない。
売掛金の入金前に仕入・給与・外注費などの資金が必要な場合は、ソクデルへご相談ください。法人・個人事業主ともに、オンラインからお申込みいただけます。 ソクデルのお申込みはこちら
※ご利用には所定の審査および手数料があります。
支払いサイト改善チェックリスト
- 主要取引先の支払日を把握している
- 月平均売掛金額を把握している
- 60日以上のサイトがないか確認した
- 売上比率が高くサイトの長い企業を抽出した
- 交渉前に希望条件を決めた
- 取引継続のメリットを説明できる
- 段階的な変更案も用意した
- 合意した内容を書面化する準備がある
- 請求書を最短で発行している
- 交渉できない場合の資金調達手段がある
まとめ|「売上を増やす」前に「売上を早く回収する」
資金繰り改善のために売上を増やすことは重要です。しかし、売上を増やせば材料費や外注費も増えるため、支払いサイトが長いままだと、かえって必要運転資金が増える場合があります。
そこで一度、自社の売掛金を「金額」ではなく「回収までの日数」で見てみてください。
月500万円の売上が60日後に入る状態から30日後に変われば、会社のキャッシュフローは大きく変わります。
取引先との関係が良好であれば、まずは支払いサイトの短縮について相談してみる価値があります。
そして変更が難しい場合は、請求業務の早期化、融資、着手金、ファクタリングなどを組み合わせて、売上から現金化までの期間を短くしていきましょう。
経営では「いくら売るか」だけでなく、「売ったお金がいつ会社に戻ってくるか」が非常に重要です。
出典・参考情報
※制度の適用可否は企業規模や取引内容等によって異なります。個別の法律判断については、公正取引委員会や弁護士等の専門家へご確認ください。
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